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始まりを迎えるために

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今回の記事は、恐ろしいことに自キャラのショートストーリーである。
世界観を深めるために書いたもので、完全に身内向け。

長文が嫌いな人、他人のキャラ設定に興味がない人は次回の記事を待って欲しい。
それでも気にしてくれる方は続きから。



始まりを迎えるために



 文明や技術が進化し、一日の作業の大半を機械が代行してくれるようになっても、人間の欲求は代替出来ない。
つまり、どんな時代でも食欲、性欲、睡眠欲は人間が抗えない三大欲求というわけだ。
メルヴィンにとってその欲求は――うち一つは「枯れている」などと言われてもいるが――何より大事なものである。

「……ヴィン様、メルヴィン様、起きて下さい」

 事務的な、抑揚のない女の声が聞こえてくる。
ああ、俺がタイムマシンを使えたら、何度でも時間を巻き戻して寝るのに。メルヴィンは内心で愚痴をこぼした。

「今起きる」
 
 短く答えたメルヴィンが気だるげに目を開く。
最初に目に映ったのは、黒い革で仕立てられた自室のベッド。革の継ぎ目は荒く、作りは雑だが寝心地は良い。「余裕のある生活」をモットーとするメルヴィンが一番吟味した家具だ。
次に目に入ったのは、先ほどメルヴィンを起こした声の主――サポートパートナーと呼ばれる支援マシナリーのメデューサ。
背は人間よりも遥かに小さく、横たわったベッドからは上半身しか見えない。顔立ちや体つきは女性的だが、頬に走るラインが彼女が人工物であることを告げている。
白い執事服を着込み、何の機能も持たない眼鏡をかけて親しみやすさを持たせた姿は、いかにもお世話ロボットと言ったところだ。
ただ、冷淡な声がデザイナーによる外見の努力を台無しにしている。口調そのものは丁寧だが、威圧感のような、有無を言わせぬ迫力があるのだ。
 

「既に正午を過ぎています。本日はアムドゥスキアの調査任務があったのでは?」
「まったく、お前は優秀だよ、メデューサ。あとは仕事について思い出させなければ完璧なんだが」

 メルヴィンは苦笑いとともに答え、頭を掻き毟りながら起き上がった。
そのまま、未だにベッドに未練を残す足を引きずりながら、ベランダにある洗面台へ向かい、メデューサが横から渡す歯ブラシやタオルを受け取りながら顔を洗う。

 鏡に映る顔は、言い訳のしようもなくだらしない。
野性的で精悍な顔つき、と評価出来る顔立ちは、今は見る影もない。
鋭いはずの金の瞳は眠気をたっぷり残し、閉じかけている。
こげ茶色の髪は好き勝手に伸び放題のぼさぼさで、どう見てもおしゃれに気を使っている様子ではない。
もちろん髭もその例に漏れず、やはり顎を厚く覆っている。
これで本人は「若々しくありたい」などと常日頃からぼやいているのだから、とんだお笑い種だ。

「アムドゥスキアの何処だ?」

 顔を洗いながらメルヴィンが聞いた。

「火山洞窟です、メルヴィン様。ヴォル・ドラゴンが狂化したとの報告が入っています」

 再び、抑揚のない淡々とした口調でメデューサが答えた。ついさっきの「仕事を思い出させるな」という要望に関しては一切の無視を貫くつもりらしい。

「よりにもって火山洞窟、おまけにヴォル・ドラゴンの狂化? なあ、寝直すってのはどうだ?」
「承諾しかねます、メルヴィン様」

 無感情な即答。実のところメデューサの主人はメルヴィンではなく、同じ部屋に住んでいるある女性なのだが、それにしても少しくらい配慮のしようはないのか――メルヴィンは頭を抱えた。

 顔を洗い終え、隣室に備え付けられたバーカウンターにどっかりと腰を下ろす。
適当な飲み物と軽食を棚から取り出し緩慢な動きで口へ運びながら、後ろに従うメデューサとの会話を続ける。

「そう言えばヴィオの姿が見当たらないな」
「マスターなら、そろそろ――」

 メデューサが言い切る前に、部屋のドアがスライドして開いた。
メデューサの所有者で、メルヴィンの同居人。メルヴィンにとって、メデューサ以上に立場が弱い相手のお帰りだ。

 ドアから姿を現したのは、額から二本の黒い角が突き出た、褐色肌の若い女性。
角だけでも十分に特徴的だが、ジャケットから覗く肌に走る複雑な模様や、左右で色の違う瞳、純白の髪も相まって神秘的、ともすれば悪魔的にも見える印象を受ける。

「――ちょうど帰ってきたようです。お帰りなさいませ、マスター」

 そのまま言葉を繋げたメデューサがその女性――ヴィオレッタを迎えた。

「……もしかして、まだ寝てたの?」

 呆れた顔でヴィオレッタが口を開いた。
胸元を大きく開いたジャケット、胴をシックに纏めるビスチェ。大人びた服装とは裏腹に、少し幼さを感じさせる声だ。
ただ、メデューサほどではないにしろ冷淡な響きで、呆れているらしい今は普段の三割増しに冷たく聞こえる。

「素直な人間なんだよ、俺は」

 欲望にな、と笑って付け加えるメルヴィン。

「そう?若々しくありたいって欲望には応えられてないように見えるけど」
「あのな……寝る子は育つって言うだろ?」
「その調子なら、横にはね」

 メルヴィンの顔が引きつった。ある程度の自覚はあるらしい。

「いやいや、見ろって、この体を!俺だってまだ行けるって!」

 思わず席を立ち、寝間着――といってもハーフパンツを履いただけで、上半身は裸の姿でポージングするメルヴィン。
確かに、寝起きの顔と違って体のほうは三十代半ばという割には逞しい。
身長が高く肩幅も広いが、絞られた体は熊というよりは狼のような印象を受ける。
無駄なく鍛えられた筋肉は実用的で、野生を感じさせる鋭さがあった。良く見ればあちこちに古傷があり、そう楽な人生を送っているわけではないことを思わせる。
ただ、真昼のバーカウンターでポージングする姿はシュールを通り越して冗談に近い。
メデューサにいたってはその姿を見て早々に持ち場へ帰り、自分の作業に戻ってしまった。

「……服、着たら?」

 ますます冷たい顔になったヴィオレッタが言った。

「ノリが悪いな」

 そんな乗りについていける人はいないよ、とため息をついてヴィオレッタが横の席に座った。
メルヴィンも肩を落として座り直し、食事を再開する。

「それで、今日は何処に行ってたんだ?」
「フランカのところ。新しい食材の調達を頼まれて」
「へえ、それじゃ随分な数を頼まれたろ?あのおばさんの元気の良さと押しの強さと言ったらよ」

 メルヴィンが笑いながら言った。何でも屋を営むメルヴィンも、彼女に良く食材の調達を依頼されるのだが、その数がいつも膨大なのだ。挙句に砲身やら装甲板さえ依頼してくるのだから、どんな料理を作っているのか想像もつかない。
そのくせフランカ本人はやたらに明朗で勢いが良く、断りきれずにこれまで何度も食材の調達を請け負わされていた。
曰く、「気がついたら約束したことになってて、通りがかるたびに調子を聞いてくる」とのこと。

「……悪い人じゃないよ。それに、フランカにおばさん、なんて言える歳?」
「寝起きのおっさんを小言で虐めるのやめろよ……か弱い生き物なんだぞ、俺は」

 もはやお手上げ、である。ヴィオレッタは、こうでも言わないとメルヴィンが調子付くことを長い間の共同生活で学んだらしい。
実際のところ、棚にあった軽食もヴィオレッタが用意してくれていたものなので、どうあっても頭が上がらない。

「まったく、反抗期の娘を持つ父は辛いぜ。最初に出会った頃はお人形みたいに大人しかったのによ」

 一瞬、顔が陰るヴィオレッタ。昔のことを思い出して思うところがあったらしい。
しくじったかな。メルヴィンは頭を掻いた。

「あー……なんだ、分かった、今からちゃんと任務には向かう。それでいいな?」
「私も一緒にね。一人にすると危なっかしいから」

 どっちが保護者なんだ――いや、これを考えると恐らく悲しい結論しか出ない。そう考えたメルヴィンは早々にその考えを振り払った。



「んじゃ、行こうか!」

 ロッカーでの着替えを終えたメルヴィンが景気付けに意気込んだ。
この時代、技術の発達――戦術OSと呼ばれる総合的なサポートアクセサリーによって一瞬で服装を切り替えられるようになった。しかしメルヴィンは、寝起きの支度は自分の手ですることにしている。
袖に腕を通し、シャツのボタンを締めていくと感じる、気持ちが切り替わっていく感覚が好きだからだ。

「にしても、最近じゃほんとお前には敵わんな、ヴィオ」
「……メルヴィンがだらしなさすぎるんだよ。良く父代わりになってやる、なんて言えたよね」

 先ほどよりはヴィオレッタの顔が明るい。調子を取り戻してくれたらしい。

「これでもいいお父さん目指してるんだけどなあ、ダメか?」
「まずはメデューサに起こされなくても起きられるようになるんだね」

 こんな掛け合いもいつものことだ。これはこれで楽しんでいる自分がいる、とメルヴィンは感じていた。

「なんだよ、地下街にいた頃は俺だって――いや、あの頃はヴィオに起こされてたか?」
「ほんと、それまでどうしてたんだって感じ」

 ヴィオレッタと過ごすようになるまで、か。
なるほど、変わったのかもな、自分も。
メルヴィンは自宅とショップを兼ねた、『オアシス』の中を見渡す。
何に使うかも分からない雑貨、大量に転がっている依頼品。猥雑に物が放られた部屋の状態は良くないが、この方が生活感を感じて気に入っている。
積み重ねてきた物がそこにある。これまで、独りで生きてきた時は無かったものばかりだ。
次いで、自分の懐から変哲もない一枚のカードを取り出す。

――アークス許可証。

 それなりに厳しい試験をパスし、アークスになったことを証明する証だが、メルヴィンにとってはただの許可証以上の意味を持つ。
自分が変わろうと決意した証。あるいは変わりつつある証。

「今日はスムーズに進むと良いね」

 ヴィオレッタの声で意識が引き戻された。怪訝な顔で見つめるヴィオレッタを適当に誤魔化すように、おどけて応える。

「そう願うぜ。前回はオプタのせいで散々な目にあったからな」

 見送りに来たメデューサに手を振って応え、『オアシス』のロックを終えたメルヴィンはヴィオレッタの横顔を盗み見た。
ヴィオレッタの左目に走る傷跡。随分前の傷だが、やはり少し残ってしまったようだ。

 その傷を見つめながら、振り返る。
ヴィオレッタを拾った時のこと、地下街での暮らしのことを。

 さあ、奇妙な二人の物語を始めよう。始まりはありきたりだ。
話は八年前、ヴィオレッタと出会う前まで遡る――。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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非公開コメント

No title

精細で魅力的な人物像にぐっと引き込まれましたそうダリウスのEのように

No title

お前そんなに年よりだったのか・・・・次DFで会ったら無理せず隅っこで座ってろ!な!?

No title

タカマルのブログで長文は慣れっこですので・・・

メルヴィンのセリフは「藤原啓治」で再生余裕でしたwww

返信

wild turtleさん>
あんた絶対Jigさんだろ!
内容自体は褒めてくれてるせいで評価に困る

タカマルさん>
無精髭の時より設定年齢上がったんだよね、やや哀愁ただようオッサンになった

きゃにあさん>
モロに意識してるところではあるよね、ああいう、格好良くもダメな雰囲気のおっさんって最高。

No title

ブログ巡回屋から参りました。
初めまして、りぃ と申します。

小説、拝見させて頂きました。
マイキャラ愛が滲み出ていて素敵です…。
文章も重厚で、読み応えタップリで世界観とも合っているなぁと感じました。
これからもちょこちょこ、覗きにきますね♪
(追伸:ナックルは今まで使っていなかったんですけど、
 ちょこっとやってみようかなとも思います。記事、参考になりました*^^*)

返信2

りぃさん>
コメントありがとうございます、どうも初めまして!

身内向けに書いた小説ですが、楽しんで頂けたのなら嬉しいです。
文章の表現についてはどこまで描くか悩ましいところで悪戦苦闘しています。
気が向いた時の暇つぶしにでも、是非覗いてみてくださいね!

ナックル、面白いですよ。
使ってみればきっと魅力が分かるはず!
プロフィール

Melvyn

Author:Melvyn
メインキャラクター:メルヴィン
サブキャラクター:ヴィオレッタ

活動Ship:Ship4、アンスール

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