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少女との邂逅 II

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 やっとこさ三個目の更新。
 想像より話が長くなりそうなので、前回の話も含めてタイトルを変更。
 書きながら話に変更を加えるのはあまり良くないことだが、素人なので多少は許して欲しい。

 例によって身内向けなので、読もうと思う方だけどうぞ。
 下記は目次。上から順に話が展開していく。

 ・「始まりを迎えるために」
 ・「少女との邂逅 I」
 ・「少女との邂逅 II」



少女との邂逅 II



 どう考えたって最悪だ。メルヴィンは呻いた。

 地下街に逃げ込もうとする厄介者の情報は大抵の場合、地下街とのパイプ役を務めるベルファミアというアークスから渡される。わざわざ地下街に関わろうとするような物好きだ。こいつが相当にくせ者で、いつも大雑把な情報しか寄越さない。おかげで毎回、想定外の事態に振り回されていた。
 だがそれもメルヴィンに対するある種の信頼があってこそだ。現に三人だと伝えられた逃亡者の数は正確には五人だったわけだが、大した問題にはならなかった。癪なことに、ベルファミアは本当に必要な情報は伝え忘れない。

 しかし目の前のコンテナはどう見てもいつもの想定外とは違った。
 妄執に取り憑かれた男達がアークスの廃倉庫から盗み出したという細長いコンテナ。その中にすっぽりと収まり沈黙を守る不気味な少女。
 ベルファミアがアークスに問い合わせた情報では、廃倉庫には何の価値もないスクラップしか置いておらず、盗まれた物もないという話だった。さすがにその情報を聞き間違えることはないはずだ。
 つまりこのコンテナは、正規のアークスであるベルファミアにすら話が伝わっていない曰くつきの代物ということになる。
 まさに想定外だ。メルヴィンは頭を抱えるしかない。

 コンテナの中に収まる少女は見るからに危険な雰囲気だった。
 コンテナの内部、上部の端に備え付けられたモニターによるとこの少女はまだ生きているらしい。心電図は穏やかな鼓動を記録していた。
 歳は15、6といったところだろうか。体の線の細さに似合わない無骨なバイザーが顔を覆っているため、正確なところは分からない。
 硬質の素材で各所を覆った白い衣装から覗く褐色の肌は絹のように滑らかで、衣装とのコントラストが引き立っていた。その色合いには美しい印象を受けたが、肌のそこかしこに刻まれた刺青のような黒い文様がその印象をぶち壊していた。
 体に走る文様は幾何学的なデザインとは裏腹に妙に生々しく映った。まるで蛇が這っているかのようだ。

 生贄。あるいは生贄を啜る悪魔そのもの。
 メルヴィンの頭にそんな言葉がよぎった。メルヴィンは少女の頭――最も異様な部分に目を向けた。

 少女の額から生える二本の角。歪に尖った黒曜石のようなその角を眺めていると、惹き込まれる感覚があった。だが、こんな状況では関わりたくないという思いしか抱かない。メルヴィンはこういった厄介事に関するセンサーは人一倍敏感だった。
 ただごとではない少女の外観と、物々しい作りのコンテナ。悪魔とそれを封じ込める檻。メルヴィンは思わず身震いした。

「なあ、中に何が入ってたんだよ?」

 件のコンテナを盗んだ男達のリーダーの声で、メルヴィンの思考は遮られた。リーダーを含む全員は既に縛り上げられ、通路のパイプに結んでまとめられていた。意識があるのはリーダーの男一人で、他の男達は気を失ったままだ。
 男はどうしても中身が気になるようだった。自分達が全てを捨ててまでその身を預けた夢の正体が知りたいようだ。確かにやりきれない話ではある。

「聞いて驚け、中に入ってたのはコスプレ紛いの格好をした美少女だ。上での暮らしを捨ててまでロリコン趣味に走るとは大したもんだな」

「俺をからかってるのか?」

 狼狽えた男の声。そんな中身は想像すらしていなかったらしい。

 人攫いがその筋の相手に売るために少女を拐った――そんな簡単な話だったらまだ良い。

 メルヴィンはそう思わずにはいられなかった。
 アークスにも存在が知らされていない少女。その少女の異様な風貌。コンテナにある虚空機関という記述。気分を明るくさせてくれる要素が一つもなかった。

 今のところ少女が起き上がる様子はない。王子様のキスで目覚めるというわけでもないだろうし、出来ればそのまま寝ていて欲しい。余計な面倒は御免だった。
 しかし、メルヴィンのそんな願望はすぐに砕かれた。
 無機質な作動音がパイプの駆動音に混じって聞こえ始めたからだ。
 その音はどう聞いてもコンテナから鳴っている。機械的で何の特徴もない音だが、今のメルヴィンには不吉なものにしか聞こえなかった。

「お次はなんだ?巨大なロボットにでも変形すんのか?」

 メルヴィンがうんざりした口調で言った。
 見れば、少女の心拍数を表示していたモニターが赤く点滅していた。一瞬、少女の体に何か異常が起こったのかと思ったが、そのモニターには「覚醒シークエンス開始」という文字があった。
 なるほど。キスはしていないはずだが、どうやらお目覚めらしい。目の前でめまぐるしく表示を切り替えるモニターをぼんやり眺めながら、メルヴィンは他人事のようにこう思った。今日は人生で最悪の日だ。

 少女の衣装に繋がっていたコードが外れていく。まさに檻から解き放たれる悪魔といった様子だ。
 縄を外せ、俺達を殺す気かとわめくリーダーの訴えを無視し、メルヴィンはコンテナから僅かに距離を取った。
 電気信号で少女の意識を活性化しようとしているらしく、時折少女の体が跳ねた。
 随分乱暴な処置だ。メルヴィンは少し顔をしかめた。とても大事にされているようには見えない。しかしそれなら、コンテナをこうも頑丈にする理由はなんなのか。メルヴィンには一つだけ思い当たる理由があった。

 つまり、こいつはとんでもなく危険な存在なのではないか。

 モニターは「覚醒シークエンス終了」という文面を映していた。今や少女に繋がっていたコードは全て開放され、いつでも立ち上がれるように見えた。
 ここまでは問題ない。少女がただ眠りから覚めただけだ。だが、次に表示されたのは「命令受信。戦闘コード承諾。被験体を起動」という嫌な予感をより現実的な言葉にしたものだった。

 命令?つまり自発的に起きたわけじゃないのか?いや、それよりも――戦闘コードだと?

 メルヴィンが思案に囚われたその時、コンテナから少女が起き上がった。長い眠りを感じさせない、しなやかな動きだった。
 両目を覆うバイザーが起動し、モノアイカメラから発する緑色の光が妖しく光っている。地下街に繋がる暗い通路で起こされたにも関わらず、その立ち姿に戸惑いは感じられなかった。

 生暖かい空気のせいか、先ほどから嫌というほど感じている予感のせいか――メルヴィンの額から汗が一筋垂れた。薄汚い、暗闇が包む地下通路にあって少女の白い衣装は酷く目立った。そこだけ違う景色を切り取ってきたかのようだ。今や少女は周りの闇より恐ろしい雰囲気があった。

「おい、大丈夫か?お前、どうしてそんなコンテナに入ってたんだ」

 メルヴィンは一縷の望みを託して少女に声をかけた。もちろん、何が起こっても対処出来るように身構えながらだ。
 起きるまでの一連の動作に全く余計な動きを見せなかった少女が、少しだけ顔を動かした。表情が一切読み取れないその顔をメルヴィンの方へと向ける。

「対象確認。戦闘開始」

 少女の声。思ったより幼い響きだ――考える間もなく、モノアイの焦点がメルヴィンに定まった。
 次の瞬間、少女は凄まじい早さでメルヴィンに向かって突っ込んできた。地下通路の闇を切り裂く白い影のようになってメルヴィンに迫る。

「人の話を聞けよ!」

 半ばやけになりながらメルヴィンが構えた。先ほどの男達など比較にならない動きだ。しかしまだ対処出来ないほどでもない。メルヴィンとてただ気楽に地下街で生きてきたわけではない。戦闘だけに限って言えば、これより悲惨な状況に陥ったこともあった。

 ひとまず少女を昏倒させ、後のことはベルファミアにでも丸投げすればいい。メルヴィンはとりあえずの方針――ただ考えることを放棄しただけだが――を決めた。
 突っ込んでくる少女を受け止めて抑えこんだら、後は極めればとりあえず自由は奪えるだろう。そう考えたメルヴィンはある意味、油断していた。

 全力疾走の勢いを全く殺ずに放つ、体重の全てを乗せた少女の右ストレート。これまた先ほどの男達とは比較にならない早さだ。女の振る腕とも思えない風切り音がメルヴィンの顔に目掛けて迫る。
 その拳をメルヴィンは左腕で顔から反らし、右手で掴んだ。後はこのまま投げて抑えこめば、少女を落とせる。その動きの流れは、メルヴィンの予想通りに思えた。そう、ここまでは良かった。

 少女は掴まれた腕を――事も無げに上へと振り払った。
 そして右手で少女の腕を掴んでいたメルヴィンは、その体ごと浮き上がって跳ね飛ばされた。

「馬鹿な――」

 メルヴィンが言い切る前に、壁に走るパイプの束に叩きつけられて地面へと落ちる。
 メルヴィンの体を受け止めたパイプはひしゃげて曲がり、亀裂から蒸気を吹き出した。

「げほっ……じょ、冗談じゃねえぞ」

 メルヴィンが痛みに呻き、しかしはっとして上を見上げた。メルヴィンの視界に映ったのは、既に間合いを詰めていた少女が脚を大きく開き、その踵を今まさにメルヴィンの頭上へと振り下ろそうとしている姿だった。
 踵落とし。慌ててメルヴィンが横っ飛びに避けた。まるでハンマーで地面を殴ったかのような鈍い音が響き、メルヴィンが直前まで倒れこんでいた床が歪んだ。

 こいつは――ただの少女じゃない。正真正銘の化物だ。

 メルヴィンは今になってその油断を痛感した。大の男を腕ごと振り払う?踵落としで鉄製の地下通路の床板を踏み抜く?相当な強度のフォトン適性者か、あるいは何かしらの強化が施されているのか。どちらにせよ普通の人間の能力ではない。手心でも加えようものなら――いや、そうでなくとも――自分が危ない。

 あの威力の蹴りを受け止めるのはメルヴィンでも難しい。女を殴るのは趣味ではないが、そうも言っていられない。全く、本当に最悪の日だ。こんな少女の見た目の化物と戦うはめになるとは。後でベルファミアにはたっぷり事情を説明してもらわないとな。
 メルヴィンは覚悟を決めて立ち上がり、少女に向かって殴りかかった。
 素早い右フック。少女と遜色のない早さの拳は、少女が顔を沈めてたやすく避けられた。
 少女の反撃。沈み込んだ勢いを活かしたアッパーがメルヴィンの顎に吸い込まれるように飛び込んでくる。
 間一髪、顔を逸らしてそれを避ける。軽く掠った顎の先から伝わる痛みが、その拳がまともに入った時のダメージを想像させ、背中が粟立っていくのを感じた。
 体勢を崩したメルヴィンの脇腹に少女の膝蹴りが襲った。獣に噛み付かれたかのような衝撃が腹に伝わり、メルヴィンは痛みにうずくまった。

「ぐあっ……」

 少女の容赦のない追撃が続く。メルヴィンの顔を手で掴み、壁に目掛けて叩きつける。人間とは思えないほどの力で叩きつけられ、メルヴィンは半ば強制的に肺の中の空気を吐き出した。
 呼吸が止まって膝から崩れ落ち、倒れこむかのような動きを見せたメルヴィン。少女が止めを刺すために姿勢を直そうとしたタイミングで、崩れかかった姿勢からメルヴィンが少女に向かってタックルを仕掛けた。
 隙を狙ったこの動きにはさすがの少女も対応する余裕がなかったのかまともに食らい、しかしそれでも倒れこむことはなかった。
 すぐにメルヴィンのコートを掴み、最初と同じように投げ飛ばそうとする少女。

 くそ、これでも足りないのか!

 メルヴィンは舌打ちしながら少女の腕を振り解き、間合いを取った。
 少女は何の反応も示さず、メルヴィンと相対する。

「おいおいおい……お前な、俺がフォトン適性者だから良いけどよ、普通なら死んでるぞ」

 メルヴィンはいつものように軽口を叩いたが、あまり状況は良くない。少女の攻撃の威力は明らかに常識を超えている。どう考えてもフォトンの適合者だ。その威力はとても筋力だけで出せるものではなかった。
 長期戦は良くない。これまでメルヴィンの攻撃はほとんど避けられている。このまま戦いが長引けば、不利になるのは既にダメージを負っている自分だ。

 具体的な考えがまとまる前に、再び少女が突撃してきた。怒気も殺気も感じないが、合理的に人を殺そうという動きだ。仕留めに来ているな、とメルヴィンは感じた。
 しかし、その走りに初めて歪みが生じた。少女の体がぶれ、数歩よろけて動きを止めたのだ。

 何だ?

 未だにメルヴィンの打撃は少女に通っていない。不可解なよろめきだったが、少女は早くも動きを取り戻そうとしている。考える時間はない。このチャンスを活かさない手はなさそうだ。
 メルヴィンはまるで無策かのような正面突破を試みた。少女に正面から飛び込み、殴りつけようとする。
 ある程度の落ち着きを取り戻したらしい少女は即応し、拳でメルヴィンを迎え撃った。

 しかし、その拳は完全にメルヴィンの予測の範囲だった。メルヴィンが殴りかかろうとした動きはフェイクだったのだ。
 少女の拳に合わせて機動を変えたメルヴィンの体はいとも容易くその拳を避け、隙を晒した少女にカウンターが突き刺さる。

 渾身のアッパー。少女は避けきれず、左頬にその拳をまともに受けた。手に握ったナックルダスターが少女の頬を深く切りつけバイザーを砕く。砕いたバイザーは小さい破裂音とともに漏電し、少女の体に電流が走った。その結果はメルヴィンにとっても予想外で、同じく電流を受け止めたメルヴィンの体がよろめいた。

「うあっ……」

 少女が短く呻いて倒れこんだ。バイザーの残骸が床に転がって乾いた音を響かせる。
 嵐のような一瞬が終わり、あたりにはパイプを伝わる駆動音だけが残った。

「くそ、ベルファミアめ、大事にしてたポスターをあいつの目の前を破ってやる」

 メルヴィンが憎まれ口を叩いた。今日はとにかく予定外が多すぎて、疲労困憊だった。
 メルヴィンは倒れた少女を覗いた。左頬に深い切り傷があったが、目だけはバイザーに守られて無事なようだ。意識は失ったようだが、途中で目を覚まされても困る。何かの足しになるとも思えないが、急いで少女の体を鎖でがんじがらめにして縛った。

 改めて少女の顔を見る。傷からの出血が痛々しいが、美しい顔立ちだ。想像通り、まだあどけなさの残る幼い少女のようだった。
 しかし、それならば何故こんな力を持っているのか。とても普通の人間とは思えない戦闘能力だ。それに、少女が起き上がった時の「命令」とは何のことなのか。この場にいたのはメルヴィンと、既に縛られて身動きの出来なかった男達だけだ。暗いが場所の開けた地下通路に他に誰かがいた様子もない。少女が急によろめいた理由も分からず、不可解なことだらけだ。

 メルヴィンは深いため息をついた。どちらにせよ、今日は疲れた。考えることは多いが、自分もとても無事とは言えない。ひとまず男達と少女をベルファミアに届け、詳細は後で確かめるとしよう。

 メルヴィンは少女の傷に簡単な処置を施し、少女を抱きかかえて上層との連絡が取れる場所へ向かって歩き出した。
 戦いが始まってから終わるまで、ずっと壁に張り付いていた男達のリーダーが相変わらずわめいていたが、気にせず歩みを進め始める。あいつは、こいつを届けてからでも回収すればいい。
 腕の中に収まる少女には、先ほどのような恐ろしい雰囲気はなかった。
 褐色の肌に刻まれた悪魔のような模様も、幼い顔立ちと併せて見ればどことなく痛々しく映った。一体、この少女に何が――いや、何をされたのか。

 虚空機関。アークスの闇とも噂される、実態の分からない研究機関。その組織のコンテナで眠っていた少女。
 少女に視線を落とす。あわや命を奪われるところだったが、不思議と憎しみは湧いて来なかった。
 ひょっとしたら、少女の悲惨な人生を勝手に想像して、同情したのかも知れない。

 メルヴィンは肩を竦めた。

 本当に――今日はどうかしてる。

 この少女を届けた時にベルファミアにかける恨み辛みの言葉を考えながら、メルヴィンは歩き続けた。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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No title

ベルファミアがあやしい・・・奴が虚空機関のラスボスに違いない!
はじめて見たときからそんな目をしてました。

返信

タカマルさん>
実はベルファミアを登場させる予定は最初は無かった。
でもパイプ役の性格を考えたらベルファミアが似合ったので登場させることに。

虚空機関は公式設定だし、一応ルーサーが総長だろww
このパイプ役が物語にどう絡むかは、まあ続きを待っててくれ。
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